2011年3月5日土曜日

◆ミルクが先か、紅茶が先か

日本人の皆様は、イギリスの紅茶といえば、優雅なアフタヌーンティーを思い浮かべるのではないでしょうか?
でも、好事家、紅茶専門店、高級ホテルなどを除き、イギリスの普通の家庭、喫茶店では、茶葉ではなく、手軽なティーバッグで紅茶を淹れます。
イギリス人にとって、紅茶とは、午後に優雅に寛いで味わうものではなく、午後まで待たず、いつでもどこでも、気取らず楽しむものなのです。

目覚めの一杯「アーリーモーニングティー」(Early Morning Tea)
朝食時の「モーニングティー」(Morning Tea)
午前中の一息「イレブンジズティー」(Elevenses Tea)
昼食時「ランチティー」( Lunch Tea)
午後の集い「 アフタヌーンティー」(Afternoon Tea)
仕事の後「 ハイティー」(High Tea)
一日の締めくくり「ナイトティー」(Night Tea) というふうに。

イギリスのティーバッグをご紹介します。
四角型
丸型
ラベルが二つついていて両手で左右に引っ張って絞る
ピラミッド型(バッグの中で茶葉が踊るように)
ティーバッグで、おいしく紅茶を淹れるコツは、沸騰したての熱湯を注ぎ、カップの中で茶葉を踊らせ、ティーバッグを取り出す時によく絞ることです。
茶葉で、おいしく紅茶を淹れるコツは、沸騰したての熱湯をティーポットに勢いよく注ぎ、ティーポットの中で茶葉をジャンピングさせることと言われています。
ジャンピングとは、注いだ後、水面に集まった茶葉が、水分を吸収し沈み始め、その時に熱湯の対流により起こる茶葉の上下運動のことです。  
昔、「紅茶をおいしく淹れられるようになれば、お嫁に行ける。」と、イギリスの母親が娘に言ったそうです。 

イギリスで紅茶といえば、ミルクティーです。
イギリスでは、98%の人が紅茶にミルクを入れ、30%の人が紅茶に砂糖を入れるそうです。
そんなミルクティーの国、イギリスで、カップに注ぐ時に、「ミルクが先か、紅茶が先か」が長い間、議論されています。

ミルクを先に入れる派は、「ミルク・イン・ファースト」(Milk in First)(MIF)、
紅茶を先に入れる派は、「ミルク・イン・アフター」(Milk in After)(MIA) と呼ばれています。

「ミルク・イン・ファースト」の主張
・カップに茶渋がつかない
・ミルクと混ざりやすい
・熱い紅茶を注ぐとカップが割れる
・ミルクの香りがたつ

「ミルク・イン・アフター」の主張
・紅茶の味や濃さを確認できる 
・ミルクの量を調節できる

歴史的には、紅茶の熱によってのカップの割れを防ぐ為、ミルクが先にカップに入れられていたそうです。
昔、使われていた陶器は、紅茶をカップに直接、注ぐと、割れてしまうことがあり、富裕な人が割れにくい陶磁器を使うことができたそうです。

英国王立化学協会は、ミルクは紅茶よりも先に入れることを主張しました。
「ミルクを先に入れると、熱い紅茶が少しずつ加わり、ミルクの温度はゆっくりと上がっていき、ミルクのたんぱく質は変性しないで風味が保持されるが、ミルクを後で入れるとミルクのたんぱく質に変性が起き、ミルクが固くなり、硫黄臭で香りも悪くなる。」という見解です。

これに反対して、英国物理学会は、「紅茶を淹れる際の最も重要な要因は、水の温度であり、ミルクではない。」という見解を示しています。

このように、「ミルクが先か、紅茶が先か」が長い間、議論になっているということは、イギリス人が、いかにミルクティーに、こだわりがあるかということですね。
この議論、きっと永遠に続くのではないでしょうか?(笑)

ちなみに、我家は、私が「ミルク・イン・アフター」で、主人が「ミルク・イン・ファースト」です。
日本人は、「ミルク・イン・アフター」なのではないでしょうか?
私は、イギリスで、初めて、「ミルク・イン・ファースト」を知りました。
エリザベス女王は、「ミルク・イン・アフター」だそうです。

ところで、私は、ミルクティーをおいしく淹れるには、「ミルクが先か、紅茶が先か」ということより、茶葉の種類、温度、紅茶の濃さ、ミルクの量による違いが大きいと思うのですが。
また、同じイギリスの紅茶のミルクティーでも、日本で飲むのとイギリスで飲むのでは、かなり違うように感じます。

水の硬度による違いですが、イギリスの硬水で淹れた紅茶は水色が濃く、暗い色調で、日本の軟水で同じような水色に淹れると、紅茶の成分、特にタンニンが出やすいので、味が濃く、渋い紅茶になってしまいます。

ミルク(牛乳)の違いですが、イギリスの牛乳は62~66℃で約30分かけて殺菌する「低温殺菌牛乳」で、日本のミルクは120~135℃で約2秒間で殺菌する熱変性した「超高温殺菌牛乳」なので、イギリスのミルクティーはさらっとしていて臭みがなく、日本のミルクティーは濃厚で臭みがあるのです。  
日本の牛乳のミルクティーの臭みは、「ミルクが先か、紅茶が先か」で英国王立化学協会が主張した見解と一緒ですね。 

日本からイギリスに遊びに来てくれた友人が、「イギリスは食べ物がおいしくないけど、紅茶は本当においしいね!」って言っていたのですが、紅茶の質だけでなく、硬水、牛乳も理由ですね。 

イギリスの低温殺菌牛乳は、ゆっくりと殺菌する為、より生乳に近いコクや甘みがあり、たんぱく質・ビタミン・善玉菌などの栄養素も保たれているそうです。
イギリスは、生クリーム、アイスクリーム、クロテッド・クリームなど他の乳製品も豊富でお手頃でおいしいんですよ!

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